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ジャン・ピアジェ(1896−1980)はフロイトと並ぶ20世紀が生み出した最大の心理学者である。ある学者の指摘によれば、ピアジェの思想の根本には、生物はみな発達する傾向をもち、環境の影響によって必要と不要になる器官は発達・退化し、その変化が遺伝とともに進化の要因をつくると説いたラマルクや精神的なものの独自性と、生きることは不断の創造的活動であり、創造的な進化に他ならないと説いたベルクソンの両思想に由来するという。人間は、外界の事物を認知してそれに適応してゆく能力を発達させる。それは感覚器官により知覚する段階から、事物の現象をもとに認知する段階、事物と自己との関係をもとにして認知する段階、そして事物が存在しなくても想像力によって認知する段階へと到達してゆく。
認知運動療法を考える時、この思考の発達が身体の存在意味の変化と表裏一体であることを認識しておく必要があるし、患者の病態把握分析や治療方略においての分析基準となることを忘れてはならない。セラピストには、常に認知発達という視点から患者の身体運動を解釈する能力が問われる。そして、そのセラピスト自身の能力もまた、ピアジェのいう認知発達段階に準じている所に、この壮大な理論の普遍性があるように思う。
2000.8.9
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