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メッセージNo.82 新春に、リハビリテーションを想う

 2018年1月15日付けの『東洋経済オンライン(ネット上の経済ニュース)』に、1967年のソニーレコード設立と同時に入社し、ソニー・ミュージックエンタテインメントの創業立役者として活躍した丸山茂雄氏に、黒川文雄氏がインタビューした記事が掲載されていた。タイトルとインタビューの一部を抜粋して引用する。

今のトップは逃げ切ることばかり考えている。
日本全体が終わってるって思う。

最悪だったのはインターネット

 丸山:最悪だったのはインターネットだよ。ネットの存在自体はいいんだよ。でも、「こんちくしょう」が言葉とか作品のほうに反映されずに、「死ね」とか何とかっていうネット上の悪口だけになっちゃって。そこからもうひとつ上がって、「自分はこう考えている」っていうところまでいかなくなっちゃったんだよね。

 みんなが「こんちくしょう」からもう一段上がってくれると、それが作品になってね。文学とか音楽とか、そういうものに昇華されるんだけど、そこまでいかないからね。ここんとこ俺は「音楽はもう終わった」みたいなことをよく言ってるんだけど、そういうことなんじゃないかなと思ってる。

 黒川:でも、それは時代とかテクノロジーとか人の生き方とかが変化していく中で、変わらざるをえない必然だったとも思います。それで、丸さんは今後どうなると思われるんですか? チャンスも情報もほぼ均質化して、たとえば自分が世に出たいと思えばインターネットもあるし、ほかにもいろんなやり方もありますよね。

 でも、そうした中で、かつての音楽のエッジの立っていた部分が薄れたりしてしまった。かつては「この人しかできなかった」ものが誰でもできるようになっちゃった中で、その先に何があるんですかね。

 丸山:どんな時代にもね、自分はみんなと同じように群れたくないっていう人は必ずいるわけでね。どういう生物学上の法則があるのかわかんないけど、全人口の何パーセントかはそういう人なんだよな。だから、これからもそういう人は必ず出てくる。どういったところから出てくるかは俺にはわからんけどな。

 丸山:ただ、日本人ってのはもともと群れやすいというか……最近だといちばんわかりやすいのは希望の党とか都民ファーストがそうだったよな。小池劇場っていうのがあって、あそこにみんながワーっと行ってね。でも、それが「排除します」っていう、たったひとつの言葉だけで、またダーって引いちゃったわけじゃない。

 ああいうふうに同調するっていうのは何もこの時代だけの話ではなくて、昔からそうで。俺が知ってるかぎりにおいて言えば戦前がそうだよね。みんな被害者ヅラして軍部が悪いって言ってるけど、明らかにあの時代、すべての国民がソッチを向いてたよな。向いてたからこそ「敗戦」って言わないで、悔しまぎれに「終戦」って言ってるわけじゃない。

 黒川:そうですね。

 丸山:でも、明らかにあれは敗戦だよね。で、民主主義化したっていうけど明らかにアメリカに占領されて、そのアメリカの支配を唯々諾々と受け入れたわけじゃない。つまり軍部に代わってアメリカっていう国の支配下に入ったわけだけど、それを割と不思議に思わないっていう部分だよね。

 それは、政治であれ経済であれ、それこそ音楽であるとか、文学であるとか、ゲームでもなんでもいいんだけど、今風向きがこっちだなってときは、そんなにキョロキョロしないで、みんなそっちに瞬間的にダーッて行くっていう国民性ではあるわな。でも、みんながダーッと行く方向に、その平均の中に埋もれたくねえってヤツは絶対にいるのよ。そういうヤツは違う方向に行くしかないからね。

 黒川:僕も音楽業界にかかわって仕事していましたが、音楽業界って80年代ぐらいから、この30〜40年の間、何かが急にヒットして会社が持ち直したりするのを繰り返しているだけで、何ひとつ変わってないような気がするんですよ。なぜ変わらないのかっていうと、やっぱり爆発的に売れる何かが出ちゃうとそれに頼っちゃうし、それがダメになってもいつかまた何か出るよな、みたいな気持ちがつねにあるからじゃないかと思うんですが、丸さんはどのように感じられていますか。

音楽業界ぐらい変わってないものはない

 丸山:明らかに変わってないね。日本の全産業の中で音楽業界ぐらい変わってないものはない。それで、結局食えなくなってきてるんだけど、中心にいる人たちは何も焦らずにいて、自分たちがやってきたことへの反省もなく、静かに皆さん退場していこうとしているのは不思議だよね。

 それはなぜかっていったら、「あ、自分たちは逃げ切れる」と思っているからだよ。気分よくトップ層にはいるけど、次の人たちのために何かをするとか、あるいは自分のいる業界をさらに発展させようっていう意欲もなく、ひたすら逃げ切ろうっていうのを多分20年間ぐらい続けているわけだよね。

 黒川:まさに今の日本の政治と一緒だと僕は思っています。

 丸山:恐るべきことだよね。じゃあ、それが音楽業界だけかっていうとそうじゃなくて、ほかの業界も一緒だよね。だから、異業種交流なんかがあっても「お前ら大丈夫なの?」みたいな厳しいことを言われない。まあ、今の音楽業界を見ていると「日本全体が終わってるな」って思うよね。

・・・・

 なぜか、「他の業界も一緒だね」という言葉が気にかかる。リハビリテーション(PT・OT・ST)の業界はどうなのだろうか?  あるいは、君はどうなのか。そして、僕はどうなのか。

 君や僕は、悪口だけでなく、そこからもうひとつ上がって「自分はこう考えている」と言っているか。「こんちくしょう」からもう一段上がってこようとしているか。リハビリテーションはもう終わったのだろうか。時代とかテクノロジーとか人の生き方とかが変化していく中で、リハビリテーションは変わって行っているのだろうか。エッジの立った、この人にしかできなかったものをしているか。何か楽な方向に群れてはいないか。今風向きがこっちだとキョロキョロしていないか。平均の中に埋もれたくないと思っているか。違う方向に行く勇気を持っているか。リハビリテーションぐらい変わっていないものはないのではないか。それで結局食えなくなっているではないか。中心にいる人たちは何も焦らずにいて、自分たちがやってきたことへの反省もなく、静かに皆さん退場していこうとしているのは不思議ではないのか。「あ、自分たちは逃げ切れる」と思っているからではないか。お前ら大丈夫なのかみたいな厳しいことを言われない。今のリハビリテーションの業界を見ていると「日本全体が終わってるな」って思わないだろうか・・・。

もちろん、リハビリテーションは終わっていない。
新しい時代のリハビリテーションをつくればいい。

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