学会関連図書紹介
協同医書出版社
生きられた身体のリハビリテーション
身体性人間科学の視点から
田中彰吾、本田慎一郎 著
ISBN 978-4-7639-1095-0
A5判 132頁 2024年9月25日発行
定価2,970円(税込)
『豚足に憑依された腕-高次脳機能障害の治療-』の著者、セラピストの本田慎一郎と、
『生きられた〈私〉をもとめて-身体・意識・他者-』の著者、哲学者の田中彰吾による―
リハビリテーションと現象学との実り豊かなコラボレーション!
本書は「レクチャー」と「対話」によって、次の2つの問いかけに応えます。
①リハビリテーションに応用できる「現象学」の方法を最も適切に、しかもわかりやすく知ることはできるのか?
➁高次脳機能障害に対するリハビリテーションの臨床において、その「治療の効果」を左右するものとは何か?
高次脳機能障害のリハビリテーションの手引きと、リハビリテーションへの現象学的方法の応用についてのわかりやすい入門書を兼ねた、一石二鳥の読み応え。
臨床現場を現象学哲学が読み解く面白さとともに、リハビリテーションの臨床の核心をつくヒントにあふれた内容です。
リハビリテーションに携わる臨床家にとってはもちろんのこと、身体哲学や認知科学といった関連領域の研究者にとっても貴重で有益な考え方が満載の読み物です。
協同医書出版社
ペルフェッティ・パースペクティブ[Ⅰ]
認知神経リハビリテーションの誕生
身体と精神をめぐる思索
カルロ・ペルフェッティ 著、小池美納 訳、宮本省三 編集
ISBN 978-4-7639-1092-9
B5変型判 208頁 2021年10月23日発行
定価
4,400円(税込)
その “まなざし” がみていたもの-
リハビリテーションはどこに向かうべきなのか
その探求の軌跡をたどる、ペルフェッティの貴重な講義録
本書は、日本のセラピストを対象にした、カルロ・ペルフェッティの貴重な講義の記録です。
ペルフェッティは運動機能の回復を、身体-精神のシステムの回復と捉え直し、リハビリテーションにとって革命的ともいえる視点の転換をもたらしました。それは、訓練を通して、障害によって変質した神経メカニズムの再構築・認知過程の再組織化をはかることであり、そのことは同時に患者の意識経験(主観)の変容を伴うという考え方です。言い換えれば患者の意識経験の変化が中枢神経系を改変するということです。
その視座は、運動学・神経生理学・神経心理学・脳科学・教育学・哲学など自然科学・人文科学を合体させた膨大な知の蓄積の中からリハビリテーション(病的状態における学習プロセス)の観点から役立つものを取捨選択するなかで得られたものです。リハビリテーションのための治療理論の確立のために理論的仮説を立て、訓練で検証し、理論をさらに「厳密な科学」へと発展させていくという絶えざる営みを続けてきました。
本書によってその営みを支えてきた思索の軌跡を改めてたどることは、ペルフェッティが切り開いたリハビリテーションの方向を見据え直すことであり、「未来のためのツール」を手にすることにつながります。
協同医書出版社
カルロ・ペルフェッティ 対話は続く
私たちの臨床はどう変わったのか
宮本省三、中村三夫 編集
ISBN 978-4-7639-1094-3
四六変型判 252頁 2022年9月7日発行
定価 1,760円(税込)
リハビリテーションの作業は、
理論と実践、本と訓練室の間を行ったりきたりしながら、
常に新しい問題点に戻って循環していく-
私たちは対話を続けていこう。
安直な答えではなく、
臨床を進歩させるための、
新しい問題を見つけていくために。
認知運動療法(現・認知神経リハビリテーション)を創造したカルロ・ペルフェッティが、2020年に亡くなりました。本書は彼に対する哀悼と感謝の気持ちから、23名のセラピストたちによって編まれたエッセイ集です。
一人一人が仕事の中で、自分にしか感じ取れない、考え得ない、生き得ない経験を通して、ペルフェッティとの対話を続けていきます。
協同医書出版社
言語機能系の再学習プロセスに向かって
失語症のリハビリテーションのために
稲川 良、安田真章 編著
佐藤公治、稲川 良、安田真章、木川田雅子、湯浅美琴 共著
ISBN 978-4-7639-3059-0
B5変型判 216頁 2022年3月16日発行
定価 4,400円(税込)
行為、思考を生み出す言語機能系
リハビリテーションの評価と治療のさらなる可能性
脳の言語処理に関わる機構は人間の複雑な神経システムの仕組みであると同時に、人間が世界や他者と関わりその実現手段としての行為を意味づける思考を生み出す仕組みでもあります。
本書は、失語症に対するリハビリテーション治療をテーマに、その障害を人間の神経機構と心理・文化・社会的な文脈とを橋渡しする高度に発達した言語機能系の障害として捉え、それに対するリハビリテーションの評価方法と具体的な訓練方法の流れを紹介するものです。
人間が言語を使う能力を神経科学と行為の意味論という2つの要素の統合的な関わり合い、すなわち「言語行為」として捉え直すという観点から、まずその言語行為についての理論的な整理を行い(第1章)、続いて言語行為の神経機構(第2章)、行為の意味論(第3章)、最後にその実践経験を紹介しています(第4章)。
人間のコミュニケーション能力を支えている仕組みそのものに対するリハビリテーション治療のさらなる可能性を提言する画期的なテキストです。
言語聴覚士のみならず、運動機能障害に関わる理学療法士や作業療法士にとっても極めて有益な内容になっています。
「口の中で食塊が消える」「私の手じゃない」などと訴える患者の詳細な病態分析と治療の記録
片麻痺、半側空間無視、嚥下障害、失語、失行、失調、慢性疼痛…
セラピストにとって、患者さんを治したいという思いと治療ができるということとの間には、時に大きな壁が立ちふさがります。しかし著者は、治療を諦めることはありません。試行錯誤しながら、その患者さんと共に臨床をつくりあげ、結果を出し、しかし反省点は次に生かすという形で日々臨床に臨みます。
本書はさまざまな障害の患者さんの「治療」を、一貫した治療理論に依拠して行ってきた一人のセラピストによる記録です。
著者の臨床は、脳科学を柱として認知心理学、教育学、言語学、現象学など人間を理解するための多くの学問の精華を選りすぐり障害の治療(リハビリテーション)という観点に立って構築された認知神経リハビリテーションの理論に拠っています。
そこに足場を置くことで、これまでどちらかといえばそれぞれの対応をされてきたさまざまな障害について共通の論理性をもって病態分析をし、一人一人の患者さんに対する、まさにオーダーメイドといえる治療を組み立てていきます。
リハビリテーションでは従来から詳しく行われてきた外部観察・動作分析はもちろん、主に患者さんとの対話(患者の記述)から本人の経験している世界(内部観察)の意味を推し量り理解しようとすることによって、一体なにが起きていて、なぜそうなるのかと不思議に思う理由を求め、関連知見の助けを借り、治療の糸口を見つけていくのです。
何を見て、何を聴き、どう病態を捉え、いかに治療を組み立てるか。試行錯誤の様子や転機をもたらす患者さんとのやりとり、治療仮説の検証まで、その思考(治療)過程が丁寧に記されています。
著者の思考過程、臨床の展開は謎解きのようなおもしろさがあり、患者さんの確かな変化(機能回復)がその治療の方向性の適切さを物語っています。本書の臨床風景は、これまでにない「高次脳機能障害の治療」であり、患者さんが望みうる現在であり明日でもあります。そしてこれは治療の記録であると同時に、一人一人の個性溢れる患者さんの物語でもあります。
「治療」を諦めない、共に歩むすべてのリハビリテーションセラピストに読んでいただきたい画期的な一冊です。
協同医書出版社
臨床のなかの物語る力
高次脳機能障害のリハビリテーション
佐藤公治、田中彰吾、篠原和子、本田慎一郎、玉木義規、中里瑠美子、三上恭平 著
ISBN 978-4-7639-1088-2
B5判 196頁 2020年11月28日発行
定価 3,300円(税込)
教育心理学、哲学、認知言語学、そしてリハビリテーション治療学とのコラボレーション!
姉妹編『臨床のなかの対話力』の、その次のステージへ
本書は『臨床のなかの対話力』(2019年刊行)の続編です。
本書では、前著で「対話力」と呼んだものの実体にさらに迫りたいと考えました。
それは、「対話」の口火を切り、それを維持していく力は、「私」という意識が対話の相手へと向けた言葉を探し出し、表出するという行為によって成立しているからです。
そしてまた、言語を使う人間の能力が、発達や学習に果たしている役割を理解することは、対話的な発見と学習の場であるリハビリテーション臨床の世界においても「治療理論」のベースとして意識的に活用されるべきであり、「対話力」を「物語る力」としてアクティブに捉えることで、治療における回復に向けた患者さんの原動力をよりいっそう具体的にイメージすることができるのではないかと考えたからです。
患者さんの抱える問題は、脳機能障害による運動も含めた行為全体にわたる複雑なものです。そして、その問題の解決は、どうしても患者さんの脳に備わった仕組みへのアクセスを介して図られなければなりませんし、リハビリテーション治療の目的もまた、そうした認知プロセスをどのように回復させていくのかということに尽きます。
そのアクセスのための経路、言わば人間の認知プロセスの仕組みの変化を知るために患者さんとセラピストとが出会う領域として着目しているのが、「対話」という姿で現れる、言語を使う人間の能力の創造性であり、それらが生み出す具体的な記述の分析と治療への応用です。
本書は、人間に備わる記述能力を「自分の経験を記述し、それを創り上げていく」という意味合いを込めて「物語る能力」と捉え、その能力が生み出すダイナミズムをリハビリテーション治療に活用する方法を提言しています。
リハビリテーション治療に留まらず、保育や教育学、そして心理学に関わる職種にとっても興味深く、実践の手がかりにあふれた内容です。
協同医書出版社
臨床のなかの対話力
リハビリテーションのことばをさがす
佐藤公治、本田慎一郎、菊谷浩至 著
ISBN 978-4-7639-1085-1
B5判 188頁 2019年2月7日発行
定価 3,300円(税込)
教育心理学、リハビリテーション・セラピスト、詩人が対話する
ことばによってことばを越える豊かな臨床のビジョン
人間は対話する存在です。人や環境と対話しながら人間は成長し、創造し、喜怒哀楽のなかで生きていきます。リハビリテーション治療においてそれはいっそう切実な真実です。
本書は、人間に備わったこの「対話によって成長し、支え合って現実を創造し、そのなかで希望を求めて生きていく」という原理を、ヴィゴツキーに始まる「対話」の学術理論からその実践的な活用までを、研究者、セラピスト、詩人の共同作業によって描き出していきます。
ことばが患者の認知過程を変えて回復へと導いていくという重要な役割を演じるリハビリテーション治療の現場感覚を、学術と臨床の協力によって生き生きと描き出した画期的な教科書の誕生です!
★本書の特色★
①ヴィゴツキーの正しい理解は、まずこの一冊で!
リハビリテーション治療を実践するうえで欠かせないヴィゴツキーの学習・発達理論を、ヴィゴツキー研究の第一人者である教育心理学者がセラピストに向けて丁寧に解説します。
➁ことばをリハビリテーション治療のツールにする!
対話を人間の認知過程をつくり、変えていくための臨床の技法ととらえ、ことばを治療のためのツールとして活用していくための手がかりを、児童教育、リハビリテーション治療、詩作と、それぞれの現場感覚から提言します。
協同医書出版社
疼痛の認知神経リハビリテーション
C.ペルフェッティ、F.パンテ、C.リッツェッロ、M.ゼルニッツ 編著 小池美納、朝岡直芽 訳 江草典政、宮本省三 監訳
ISBN 978-4-7639-1087-5
B5変型判 312頁 2020年1月25日発行
定価
5,500円(税込)
生きられ、身体化された「経験」としての痛みを治療する、
ペイン・リハビリテーションの新しいパラダイム!
医学的問題としての「疼痛」の背景には、「痛み」という、人間の生存に不可欠な複雑な仕組みがある。遷延化する「痛み」はまさにその複雑な仕組みの、複雑な様相をもつ破綻であると言えます。
本書は疼痛治療に対する医学の歴史の延長線上で、今日まさに展開しつつあるリハビリテーション治療の最新の方法を提供します。
理論書であるとともに充実した実践書でもあり、特に疼痛治療の訓練を紹介したパートは本書でも大部なボリュームを占め、具体的な治療の経過とその臨床思考を丁寧に解説しています。
協同医書出版社
失語症の認知神経リハビリテーション
カルロ・ペルフェッティ 編著、小池美納 訳、宮本省三 解説
ISBN 978-4-7639-3055-2
B5変型判 216頁 2018年8月22日発行
定価
4,400円(税込)
言語治療の新しい視点!
人間の言語機能の背景には、高次な脳の機能を支える皮質連合機能があることが、脳・神経科学の展開により明らかになっています。
本書はそれらの知見に基づき、失語症を失行症と同様に「高次脳機能障害」の別の病態として捉え直し、その分析と具体的な治療方法を解説しています。
絵カードと対話を使った具体的な言語訓練の方法を説明し、巻末の解説では同様に絵カードと対話を使った「失行症」の訓練も紹介しています。
言語聴覚士だけでなく、理学療法士・作業療法士の臨床においても新しい視点と臨床の手がかりを提供してくれる一冊です。
◎「解説/リハビリテーションの“春”」(宮本省三)より◎
21世紀を生きるセラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)は、それぞれ固有の学問領域を維持しつつも、その旅の道程は一人ひとりの患者の回復である点を共有していなければならない。
言語聴覚療法、理学療法、作業療法があるのではない。運動障害のリハビリテーション、上肢、体幹、下肢のリハビリテーション、感覚障害のリハビリテーション、失語症、失行症、失認症のリハビリテーション、発達障害のリハビリテーション、精神障害のリハビリテーションがあるのではない。臨床にあるのはセラピストによるリハビリテーション理論と治療訓練であり、それらはすべて「脳のリハビリテーション」に包括されるべきである。そして、それが「人間のリハビリテーション」だと思う。
2018年の現在、認知神経リハビリテーションの変遷と挑戦は続いている。その旅の目的地はまだ見えないが、「希望」は見えている。本書は「脳のリハビリテーション」を提案しており、今後のリハビリテーションの「知の飛躍」を予感させる。失語症に苦悩する人間の「回復」を予感させる。その予感があるからこそ、セラピストは旅を続けられるのである。その時、セラピスト(言語聴覚士)には重い荷物を捨て去る勇気がいる。それによって言語聴覚療法は新しい時代へと歩むことができるだろう。
協同医書出版社
臨床の造形
私たちはリハビリテーションをつくる
小川 昌、江草典政、高梨悠一 編著
ISBN 978-4-7639-6036-8
A5判 384頁 2020年5月15日発行
定価
4,400円(税込)
セラピスト、看護師、患者…あるいは病院や在宅…
職種や場所を越えて聞こえてくる
モノローグとダイアローグ
「私たちはリハビリテーションという経験の中で何をしているのだろう…誰のために,何のために.臨床は同じことの繰り返しではない。きっとそれは日々の経験によって造形されていく。」
総勢22名の“それぞれの自分史” “それぞれのリハビリテーション史”を収録したエッセイ集。
リハビリテーションの現場で紡がれてきたそれぞれの経験が、寄稿とインタビューという構成で真摯に語られています。
著者たちと実際に関わってきたセラピストが編者となり、著者たちが描いた経験の意味をさらに掘り下げ、当事者のさまざまな声があふれる世界を生き生きと伝えます。