学会長挨拶
コ・エマージェンス
~わたくしという現象の統合と自律へ~
認知神経リハビリテーションは、患者が体験する「私に固有の世界」は、客観的指標のみでは決して完全に捉えきることができないという事実に、常に真摯に向き合ってきた姿勢のもと発展してきました。これは、本邦において認知運動療法研究会(現・認知神経リハビリテーション学会)が発足した2000年から四半世紀が経過した現在においても、変わることなく重要であり続けているものと考えています。一方で、現代の科学とテクノロジーは、急速な転換期を迎えています。AI技術の進展により、従来は多くの時間と労力を要していた作業が瞬時に遂行可能となり、臨床や研究の在り方も大きく変わりつつあります。こうした科学の急速な進歩を前に、私たちは何を考え、何を創造し、そして次の四半世紀に向けて、どのように歩んでいくべきなのでしょうか。
第26回学術集会のテーマは「コ・エマージェンス~わたくしという現象の統合と自律へ~」としました。このテーマには、これまで本学会が重視してきた、客観的に観察可能な現象のみにとどまらず、患者の主体的な体験に治療者が真摯に向き合おうとすることによって紡ぎ出される臨床、つまり患者と治療者が経験を共に創発し、行為の学習へと向かっていく姿勢を継続し発展させていこうとする意志を込めています。さらに、近年急速に発展する科学やテクノロジーと私たちの立場とを対立させるのではなく、相互に取り入れながら共に創発していくために、従来の枠組みを更新しつつも、認知神経リハビリテーションが大切にしてきた価値を決して損なうことなく、発展していこうとする決意を表しています。
本学術集会が、患者の生きる経験を重視する臨床の視点と、科学・テクノロジーの視点の双方から、我々が進むべき道を議論する場となることを願っております。皆様とともに、実り多い学術集会となることを心より期待しております。
第26回認知神経リハビリテーション学会学術集会
学会長 三上恭平(登戸内科・脳神経クリニック)
