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かつて病気や怪我を患った人々にとって大きな希望であったリハビリテーションに現在、光どころか重苦しい暗雲が立ち込めている。
2006年に行なわれた診療報酬の大幅な改訂によって引き起こされた医療現場の混乱は未だ収束の兆しさえ見えない。この改訂によって脳卒中患者のリハビリテーションは発症後180日までに制限された。目的は回復期リハビリテーションの充実であったが、その代償として慢性期や維持期は制度上、国から切り捨てられることになった。少子高齢化や雇用制度改革などによる社会構造の変化、世界同時的な経済不況によって国の予算が逼迫している状況にあっては、仕方ないことなのであろうか。脳卒中患者の病巣はその名の通り脳にある。
一旦破壊された脳が回復するために与えられた時間がわずか180日というのは余りにも残酷である。仮に、経済的な理由から、これまで6年間という年月を要していた小学校での教育が、3年間で行うように制度が改定されたとしたら、国民はそれでも仕方ないと思えるのであろうか。小学校が3年間になれば、教師はこれまで通りの授業を進めるわけにはいかなくなる。
おそらく社会生活に直接的に結びつく漢字の読み書きや足し算や引き算などに限定して授業を構成するだろう。しかし、そのような教育が本来の目的である人間性の形成に繋がるはずがない。現在の臨床現場はこれと似た状況に陥っている。日数制限に伴って残存能力を使った動作や行為の反復訓練、すなわち代償的なADL訓練を主体としたリハビリテーション治療が加速している。運動機能回復に挑戦すらしようとしないリハビリテーションが強烈な勢いで普及しているのである。さらに、その背景には生きる人間の身体を機械のように扱い続けてきた理学療法と作業療法の歴史が存在することは否めない。リハビリテーションに携わってきた医師やセラピストにもこの制度を導いた責任があるのだ。
こうした現状に対して我々セラピストは何ができるのであろうか。当然ながら、対象者の症状は身体機能によってのみ決定づけられるわけではない。まず、リハビリテーションにおいて身体とその運動は、心と切り離さずに研究されるべきであり治療されるべきである。
つまりPerfettiが主張しているように認知運動療法によって脳の認知過程を活性化することで、身体と精神(心)からなる相互作用ユニットを回復し、患者が現実世界との相互作用を行いながら情報を構築できるようにしていかなければならない。リハビリテーションには、感じる能力、学習する能力、感情、未来の自分を表象する能力を考慮したアプローチが必要である。
そして、こうした「心を考慮したリハビリテーション治療(RIABILITARE CON LA MENTE)」を認知神経リハビリテーション(Riabilitazione Neurocognitiva)と言う。
本学会は認知運動療法研究会が発足してから、節目である10回目の学会にあたる。
この10年の歳月において、脳のリハビリテーションへの期待が高まってきている。2000年に第1回の学術集会が開催された神戸の地で、認知運動療法から認知神経リハビリテーションへの飛躍を会員諸氏と真剣に論議できればと思う。
本学会のメインテーマを「新しい時代のコペルニクスたち」とした。コペルニクスは16世紀に当時主流だった地球中心説(天動説)を覆す太陽中心説(地動説)を唱え、天文学史上最も重要な発見をした偉人である。またコペルニクスは、周囲の状況に流されることなく自らの信念を貫いた人物の象徴でもある。現代を生きる若きセラピストは、新しい時代のコペルニクスとなって、自らの思考(精神)と技術(身体)を厳しく鍛え(学び)、この重く苦しい時代を解き放って欲しいとの願いをこのメインテーマに込めた。
“コペルニクス的転回”とは、物事の見方が180度変わることを意味するメタファーである。リハビリテーションの世界にもコペルニクス的転回を迎える時が迫っている。
第10回日本認知運動療法学術集会
大会長 高橋昭彦
!事前登録のお知らせ
本学会は第10回の記念学会ですので、学会前日(7月3日)にイントロダクションセミナー、学会終了後(7月6日)にスペシャルセミナーを開催いたします。
テーマ | 新しい時代のコペルニクスたち −認知運動療法から認知神経リハビリテーションへ− |
日程 | 平成21年7月4日(土)・5日(日) 7月4日(土)10:00開始予定(受付:9:30〜),懇親会19:00〜21:00 7月5日(日) 9:30開始予定(受付:9:30〜) |
参加費 | 会員:11,000円(事前登録10,000円) <事前登録は2009年4月より受付開始> 非会員:12,000円(当日受付のみ),学生: 2,000円(当日受付のみ) |
会場 | 神戸文化ホール(神戸市中央区楠町4丁目2-2) |
学会長 | 高橋昭彦(高知医療学院) |
準備委員長 | 富永孝紀(村田病院) |
問合せ先 | 村田病院 富永孝紀(学術集会準備委員長) cte2009@yahoo.co.jp |
演題募集 | 3月1日(日)〜3月31日(火)発表形式はポスターのみ. 演題募集要項【PDF】をご覧の上,ご応募ください. なお、抄録作成用のテンプレート【WORD】とサンプル【PDF】を作成しましたのでご利用ください。 |
主催 | 日本認知運動療法研究会 |
第1日 2009年7月4日(土) | |
10:00 | 学会長講演「新しい時代のコペルニクスたち」 高橋昭彦(高知医療学院) |
10:30 | 招待講演1「それでも脳は学習する」(公開講座) −高次脳機能障害者の世界を語る− 山田規畝子 |
フォーラム 高橋昭彦,富永孝紀(村田病院),中里瑠美子(豊島病院), 森岡 周(畿央大学) |
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12:45 | 日本認知運動療法研究会定期総会 |
13:00 | 一般演題発表 演題名一覧【PDF】 |
15:00 | シンポジウム「我々の臨床は変革できるのか」 −認知運動療法士の治療− |
プレゼンター ピサ・ヴィゴツキー小児発達センターの臨床を経験して 金澤健人(訪問看護ステーションほたる) |
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サントルソ・認知神経リハビリテーションセンターの臨床を経験して 鶴埜益巳(高知医療学院) |
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シンポジスト 内山将哉(名瀬徳洲会病院),信迫悟志(東大阪山路病院) 大植賢治(村田病院),浅野大喜(日本バプテスト病院) |
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17:00 | 認知の樹 河本英夫(東洋大学)プロデュース −ディア・インディヴィジュアル―魂の目覚めに− |
19:00 | Reception(神戸チサンホテル) |
第2日 2009年7月5日(日) | |
9:30 | 招待講演2 「RIABILITARE CON LA MENTE:心を考慮したリハビリテーション」 −parlare col malato:患者と語る− Carla Rizzello(サントルソ認知神経リハビリテーションセンター) |
13:00 | 特別企画 「神経現象学的アプローチ(Neurophenomenological approach)の誕生」 −理学療法と作業療法から認知運動療法へ、そして認知神経リハビリテーションへ− |
「理学療法と作業療法」高橋昭彦 「認知運動療法」沖田一彦(県立広島大学) 「認知神経リハビリテーション」宮本省三(高知医療学院) 「コペルニクスたちへの提言」Carlo Perfetti(Video) |
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15:30 | 閉会 |
イントロダクションセミナー
日程 | 2009年7月3日(金) 10:00〜16:00 |
会場 | 第1会場(神戸会場) 神戸大学付属病院内 神緑会館 (神戸市中央区楠町7丁目5-2) 第2会場(ポーアイ会場) 兵庫医療大学 (神戸市中央区港島1丁目3番6) |
内容 | 第1会場(神戸会場) 認知運動療法の臨床実践 講師:高橋昭彦 プログラム【PDF】 第2会場(ポーアイ会場) 認知運動療法に必要な脳科学 講師:森岡 周 プログラム【PDF】
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募集人数 | 各会場100名 |
受講料 | 3,000円(学会参加費とは別です) |
スペシャルセミナー
サントルソ認知神経リハビリテーションセンターのセラピストCalra Rizzello(リゼロ)先生による本場イタリアの認知運動療法を体験してみませんか。実習や交流を通して楽しく学べる、臨床応用できる手技を習得する、身体運動の奥の深さを実感できるセミナーです。Rizzello先生には体幹機能障害に対する認知運動療法(観察および治療)を中心に講義をしていただく予定です。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
日程 | 2009年7月6日(月) 10:00〜16:00 |
会場 | 神戸新聞松方ホール(神戸市中央区東川崎町1-5-7 神戸情報文化ビル4階) |
内容 | イタリアにおける臨床展開 体幹機能障害に対する認知運動療法(観察および治療) プログラム【PDF】 |
講師 | Calra Rizzello(サントルソ認知神経リハビリテーションセンター) |
募集人数 | 700名 |
受講料 | 5,000円(学会参加費とは別です) |