認知神経リハビリテーション学会

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メッセージNo.144 『思考するリハビリテーション』
−第26回認知神経リハビリテーション学会に寄せて

 今回の東京学会では、本田慎一郎・玉木義規・日下部洋平著『思考するリハビリテーション −行為を構成する要素<空間性−時間性−強度>についての対話(協同医書出版社)』も新刊として読める。

『思考するリハビリテーション』から連想するのは、「運動することではなく、思考することによって回復する」というペルフェッティ先生の言葉である。かなり早い時期、1970年代から1980年代に使われた、挑発的な言葉である。個人的には、以前の学会で「ペルフェッティ追悼講演」のタイトルにした言葉なので思い入れが強い言葉でもある。

 もちろん、この「思考すること」とは認知過程(知覚、注意、記憶、判断、言語、イメージ)の活性化を指している。ただし、その認知過程は患者の脳の認知過程のことである。
 その上で、『思考するリハビリテーション』を読むと、患者たけでなく、セラピストも認知過程を活性化していることがわかる。

 つまり、『思考するリハビリテーション』とは、行為の回復に向かって患者とセラピストが共に思考することに他ならない。本書では、3人のセラピストが「対話」してそれぞれが認知過程を活性化しているが、それぞれの臨床では患者と対話していることがわかる。

 臨床に、思考すること、対話すること、その言葉の意味から患者の意識経験を理解し、セラピストの治療をつくること。そんな臨床を造形する思考が、この本には埋め込まれている。

 今回の東京学会のテーマは「コ・エマージェンス」である。共創発は一人では生じない。男女の愛と同じて、一人では生み出せない。患者とセラピストの二人が共に思考して共創発の「産物」が生まれる。その産物をペルフェッティ先生は「脳の果実」と呼んでいた。

 行為の回復は簡単ではないが、きっと今とは異なるもっといい方法があるはずだ。それを二人で探して、新しい方法を発見し、その脳の果実による回復を二人で共有してほしい。それによって臨床は「共創発」の場になる。

 リハビリテーションにおける行為の回復(病的状態からの学習)は「共創発」の産物(果実)である。

 今度の学会テーマ「コ・エマージェンス」と「思考するリハビリテーション」は、深く結びついている。

『思考するリハビリテーション』表紙

[目次]

◉はじめに◉ 「行為」の成り立ち

  1. 行為の成り立ちを支える要素と学習
  2. 行為の仕組みとしての「学習の比較照合モデル」
    1)行為のズレを修正する学習モデル
    2)段階的な学習
  3. 行為の成り立ちを支える要素と知覚・行為循環
    1)人間と環境との相互作用(ペルフェッティ)
    2)不可分な知覚と運動(ヴァイツゼッカー)
    3)切り離せない認識と行動(バレーラ)
    4)源泉としての環世界(ユクスキュル)
    5)人間に特有の意識の作用(木村敏とヴァイツゼッカー)
    6)人間に特有の意識の作用(ヴァイツゼッカーと井筒俊彦)
    7)人間に特有の意識の作用(ペルフェッティとバレーラ)
  4. 【自由討議】循環することは、繰り返すこととは意味が違う

◉テーマ1◉
 行為を構成する要素《空間性−時間性−強度》を再考する(その1)

  1. 水を飲むという行為(健常成人男性の例)
  2. 《空間性−時間性−強度》:3つの要素の変化と「モード」の変化について
    1)〈空間性〉の変化
    2)〈時間性〉の変化
    3)〈強度〉の変化
    4)モードの変化という視点
  3. 【自由討議】行為の遂行は“自分を変えられる”という能力に支えられている

◉テーマ2◉
 行為を構成する要素《空間性−時間性−強度》を再考する(その2)

  1. 行為における体性感覚の重要性
  2. 行為の3つの要素と運動イメージ
    1)運動イメージにも3つの要素がある
    2)言語を介して観察可能となる運動イメージ
    3)運動イメージの種類と身体意識
    4)身体意識と運動イメージの関係を臨床場面で確認
    5)言語によるイメージ操作練習
    6)意識にのぼる言語と消える言語
    7)“運動イメージは言語である”とは?
  3. 「身体意識の変容」の意識化と行為の要素
    1)身体意識の分類
    2)臨床における身体図式の評価視点
    3)身体像の意識化における注意点
    4)行為の要素からみた身体意識の変容
  4. 意識の多層構造モデルと運動イメージとの関連
    1)体験世界は言語になりうる可能性を帯びる
    2)意識の多層構造モデル(井筒)
    3)臨床は「垂直軸」(井筒)と「水平軸」(アノーキン−ルリヤ)が織りなす
    4)意識の構造と運動イメージとの関係
  5. 【自由討議】運動イメージは結局、“記述できる”という能力ではないか

◉テーマ3◉ 行為を構成する要素《空間性−時間性−強度》を考慮した訓練

  1. 3つの要素と訓練順序
    1)〈空間性〉が最初の訓練となる理由
    2)〈時間性〉が次の訓練となる理由
    3)〈強度〉が最後の訓練となる理由
    4)運動学習の観点からみた3つの要素の順序
  2. 〈空間性〉に関する具体的訓練
    1)訓練の設定と道具
    2)訓練全体の段階づけ
    3)問いかけの例
    4)難易度調整
    5)共時性について
  3. 〈時間性〉に関する具体的訓練
    1)訓練の設定と道具
    2)訓練全体の段階づけ
    3)問いかけの例
    4)難易度調整
    5)共時性について
  4. 〈強度〉に関する具体的訓練
    1)訓練の設定と道具
    2)訓練全体の段階づけ
    3)問いかけの例
    4)難易度調整
    5)共時性について
  5. 3つの要素を考慮した訓練
  6. 【自由討議】“共時性”は知覚をつなぎ、“通時性”は知覚を動かすということではないか

◉テーマ4◉ 訓練の段階づけと《空間性−時間性−強度》との関係性

  1. 第1段階
    1)第1段階における“知覚仮説”と病理の制御
    2)他動運動における〈時間性〉の配慮
  2. 第2段階
  3. 【自由討議】訓練の段階づけには“学習プログラム”としての根拠が必要になる

◉テーマ5◉ 訓練を改めて解体し、そして再度、組み立てる

  1. 概念化について:対象と自己身体 
    1)訓練道具とその意味性
    2)非麻痺側による訓練
    3)麻痺側による訓練
    4)世界が一致することの背後にある概念化
    5)筋緊張と意識内容の相関
    6)認知的判断の背後にある身体図式
  2. 訓練、行為、知覚仮説、運動イメージの関連
  3. 〈時間性〉の要素をクローズアップした難易度調整
    1)〈時間性〉と“知覚仮説”の関係
    2)柔軟な知覚仮説をつくれるようになる
    3)行為の変数としての時間性
  4. 【自由討議】《空間性−時間性−強度》はもっと訓練をアクティブにしてくれる
  5. 【自由討議】予測符号化仮説は、臨床家の態度を変えるか

◉おわりに◉ セラピストに必要な思考について

【付録】患者さんとの対話と意識への接近

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