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会員の皆様へ
2010年4月、日本認知運動療法研究会は日本認知神経リハビリテーション学会に名称変更しました。これは2009年の総会で承認を受けた定款第一条の変更です。
しかし、「認知運動療法」という言葉を使用しないわけではありません。認知運動療法ベーシック・アドバンス・マスターコースや認知運動療法アカデミアの名称はこれまでと同様です。
今後、「認知神経リハビリテーション」は人間の精神と身体とを分離しないリハビリテーション治療を目指すという意味で広く深く使用する言葉として、「認知運動療法」は認知神経リハビリテーションにおける治療手段を意味する言葉として区別することになります。
つまり、今回の名称変更は、狭義のリハビリテーション治療における認知運動療法の世界(患者−セラピスト関係)から、身体、脳、心、医療者、家族、文化、制度、社会など、人間を取り巻く世界全体に意識の志向性を広げた、新しい認知神経リハビリテーションの世界へと旅立つ、我々の意志を反映したものとして御理解頂ければ幸いです。
名称変更に伴い、2010年7月9−11日の高知での学会は「第11回日本認知神経リハビリテーション学会学術集会」として開催します。テーマは「人間の運動」です。
人間の運動を治療してゆくためには、人間機械論を批判し、人間の運動のアイデンティティを探求してゆく必要があります。人間の運動のアイデンティティとは何でしょうか? 外部観察的には道具を使用する手や直立二足歩行する足の機能的な進化でしょう。内部観察的には知覚、注意、記憶、言語、運動イメージ、情動などの多様性でしょう。しかし、その最大の特徴は「自らを改変する」ということです。運動によって自らの脳の生物学的変化(ニューロンレベルでの可塑性)を引き起こすということです。人間の運動システムは、身体と環境との相互作用によって自らの脳を改変し、環境との物理的な関係性(反射の支配)から脱却し、環境との認知的な関係性(反射の制御)を多様化させてゆくのです。そして、その多様化を生み出すことによって選択の可能性を爆発的に増加させ、運動の自由度を獲得しているのです。
会員の皆様に認知神経リハビリテーションの核となる言葉を捧げます。
レオナルド・ダ・ヴィンチは「運動はあらゆるものの源である」と、フッサールは「運動は認知の母である」と、ルリアは「運動は認知過程の最後の鎖である」と述べています。そして、メルロ=ポンティは「身体は意味生成の根源である」と述べ、ペルフェッティは「運動とは認知である」と述べています。つまり、運動とは「Knowing」、すなわち「知ること」を意味します。
2010年、我々日本認知神経リハビリテーション学会は、学会ポスターで予告したようにメルロ=ポンティの「知覚の現象学」から再出発します。一般演題は100題です。我々は、研究会から学会へと進化します。龍馬ブームに沸く、夏の高知で再会しましょう。
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